情報科学

数奇な運命をたどった「酒呑童子絵巻」を修復し、 "みんな" で共有・活用したい。

数奇な運命の末に京都に戻ってきた傷んだ絵巻物を修復。展覧会の開催を目指し、さらに情報技術を使って鑑賞の可能性を広げます。

赤間 亮(立命館大学)
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これまでに集まった金額
¥2,385,000
119.25%

サポーター

67

募集終了

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このプロジェクトは、までに目標金額の¥2,000,000が集まれば成立します。

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2016年、立命館大学アート・リサーチセンターに収蔵された5巻の絵巻物。

京都で1650年前後に作られたと推定されています。内容は、土蜘退治や羅生門伝説で有名な源頼光とその家臣らの活躍する伝説の中心となる説話で、能や歌舞伎の演目としても人気の「酒呑童子(しゅてんどうじ)」の物語を描いたものです。

この絵巻は、絵巻作成技術がもっとも進んだ時代に制作されたため、完成度は高く、現存する酒呑童子絵巻の中でももっとも豪華な作品の一つで、文化財として非常に価値あるものだと考えられます。

 

この絵巻、じつは長らく日本を離れて、海外のある所有者の手許にありました。まず、アメリカのボストンに渡り、その後ヨーロッパに持ち運ばれたあと、途中、第二次世界大戦の戦火を逃れ、およそ130年ぶりに京都の地へ戻ってきたものなのです。

最初にこの作品を日本から持ち出したのは、ウィリアム・ビゲローです。米国・ボストン美術館の日本美術コレクションは世界的に有名ですが、その中心に位置するのが、ビゲローコレクションです。ビゲローは、大森貝塚の発見で有名なモースや、日本美術研究で著名なフェノロサの影響を受け、明治15年(1882年)から7年ほど日本に滞在しました。その際、この酒呑童子絵巻を含む日本の美術品・文化財を4万件超も収集し、ボストンへ持って帰りました。

その後、ビゲローの膨大な収集品の大部分はボストン美術館に収められましたが、それ以前にコレクションの一部を譲り受けた者がいました。それは、ビゲローの友人で共和党の上院議員も務めたヘンリー・ロッジです。この作品群を引き継いだロッジの子孫は、ヨーロッパに移住し、第二次世界大戦中はベルギーに住んでいました。ブリュッセルがナチス軍に占領された際、やむを得ずこの絵巻や財宝を秘密の倉庫に隠して逃げることにしました。略奪されていたとしても仕方がない……そう思いながら、ナチス軍撤退後に家に戻ってみると、この絵巻物は幸運にもひっそりと階段の下の隠し場所に残っていたのです。

時を経て、現在もヨーロッパにお住まいの当主は、この絵巻の劣化が激しく、これ以上開けられない状態になってしまったことを惜しみ、日本のしかるべき組織が責任をもって修復し、この秘蔵されてきた家宝を、世界が共有する文化財として継承し、より多くの人々に鑑賞してもらうことを希望されました。そして、偶然にも立命館大学アート・リサーチセンターがその重要な仕事を引き受けることが決まり、約130年ぶりに日本に戻ってきたのです。

この絵巻が制作された土地でもあるここ京都は、現在、世界に誇る美術作品の高度な修復技術を持つ地でもあります。私たちは、この数奇な運命をたどってきた貴重な絵巻を後世に残していくために、現在の最高技術を用いて修復しようと試みています。

修復後は、制作時のように美しく甦ったこの美麗な絵巻を一般の方にもご覧いただけるよう、まずは、展覧会の開催を目指しています。
また、同時に高精細デジタル撮影を行ない、その画像を使ってWeb上で世界中の皆さんに鑑賞していただけるようにします。

ただし、作品の修復には多額の費用がかかってしまいます。実際、国宝の修復を行える修復会社の正確な検査の上で見積ってもらいますと、600万円もの修復費がかかると試算されました。現在の研究費ではまかなえそうにありません。現在、立命館大学が独自に研究資金を調達し、なんとか2巻分の修復事業を進めていますが、今回、とくに劣化が激しい第3巻の修復のための資金の一部を支援していただきたいのです。

本プロジェクトの構想はそれだけではありません。その後、技術応用が可能なデジタルアーカイブとしてオンライン上にキープし、さまざまなデジタル技術応用の素材として提供します。これにより、世界中の意欲のあるクリエーターが自由に扱い、様々な見せ方、文化資源としての活用方法の事例を提案してくれることになるのです。このような文化資源の魅力を存分に引き出す「方法自体の開発」のサンプル素材としていきたいのです。

皆さまのご支援により、この日本の貴重な文化資源を、もう一度生き返らせて、みんなで鑑賞できるようにし、さまざまな文化情報の可能性を生み出す源泉としてみたいと思っております。

〈修復前〉軸から広げた状態

〈修復中〉接がれた料紙を離して落ち着かせた状態  

                  

〈修復中〉料紙を表と裏の2枚に引き離して平らにした状態

関連情報

立命館大学アート・リサーチセンター

 

※本プロジェクトは、「寄附型」になります。ページ下部の「よくある質問」に、寄附型プロジェクトに関する一般的な注意事項も記載させていただきますので、必ずご確認の上、お申し込みください。

お知らせ

【研究計画】※プロジェクトの進行状況により変動いたします。
2019年7月下旬 クラウドファウンティング挑戦
2019年10月 修復のための状態検査開始
2019年12月下旬~ 第3巻の修復作業開始
  修復の様子は4K8K映像による収録をおこないます。
2020年9月・10月頃 修復現場の特別見学会
2020年12月 第3巻の修復作業終了
2021年1月 修復した第3巻の高精細デジタル撮影
2021年1月・2月頃 非公開特別鑑賞会実施
2021年10月 残り2巻の修復作業を開始
2022年10月 全5巻修復完了
2022年10月 VR鑑賞システムの事前公開
2022年12月 酒呑童子絵巻をメインにした絵巻展を開催
2022年12月頃 展覧会に合せて、詳しい解説付きのWebサイトを公開
       VR鑑賞システムの一般公開
2023年1月頃 デジタル・アーカイブファイルの研究利用型公開

よくある質問

酒呑童子とはどのような物語ですか?
日本の神々(善神・氏神)たちに守られた源頼光とその部下らが、都人を攫っていた鬼の首領「酒呑童子」という鬼神を退治するという伝説を題材にしたものです。このテーマは日本文学の歴史の中で形を変えて語り継がれています。能や歌舞伎の題材としても用いられていますし、絵巻物、奈良絵本、御伽草子、屏風、扇、浮世絵さらには彫刻、漆塗りの箱の絵柄、鍔根付、絵葉書などのさまざまな種類の芸術作品に描かれているのです。

酒呑童子の物語は2つの異なる古代の伝説からなり、鬼神の居所によって2つの物語に分かれています。
1つ目は伊吹山の鬼神としても知られている酒呑童子とその仲間の鬼たちの悪行を含む伊吹山物語。
2つ目は大江山鬼神退治の物語で、歴史上の6人の武士たちの武勇伝を扱っています。

絵巻に描かれたストーリーは、現代語訳や英訳も施して一般公開する予定です。
修復はどのようにおこなわれるのでしょうか? なぜそんなに高額の費用がかかるのでしょうか?
この絵巻は、最初に制作されて以来、一度も補修されることなく、現在まで伝わってきています。通常は、2枚、3枚と重ねて貼り合わせた料紙を継ぎ合わせて絵巻にしますが、本絵巻は、厚みのある一枚ものの料紙が使われています。また、裏にも美しい装飾模様が施されています。何度も開いたり巻いたりしているうちに、料紙は弱って縦に裂け目が入り、絵の具も欠け落ちます。特に軸に近づけば近づくほど径が小さく、きつく巻かれることになり、折れは激しくなります。
本絵巻の場合は、それぞれの折り目を補強するというような応急措置では対応できないことが判明し、全面を補強する必要があると判断されました。そのため、本来1枚の料紙を丁寧に裏側と表側にの2枚に引き裂いていく必要があるのです。裏絵や文字が画かれている表側は、さらに絵の具が劣化して、剥落する危険がありますので、特殊な溶液を使い、手作業で丁寧に定着させていく必要があり、熟練の職人さんが掛りきりになって丸一年の歳月を要する作業なのです。
高額の費用がかかるのは、やむを得ないことなのです。
作品のデジタル・アーカイブ化は、どのようにおこなわれるのでしょうか?
解像度の高いカメラを使い、横に長い絵巻を、何枚もに分割しながら撮影します。紫外線をカットしたライトを使い、反射や影などのライトの効果にも配慮しつつ作品を立体感を持たせて撮影されます。
分割した画像は、重なり部分を認識するソフトウェアを使って接続され、横に長い一枚の画像となります。分割された画像一枚一枚の画像も含めて、たくさんの画像が蓄積されます。全体の画像は、Web上では、部分拡大したいときにその部分だけの画像が送られてくるシステムを組込み、スムーズにシームレスに画像が閲覧できます。
画像と解説(注釈)を結びつけて閲覧できるビューアーやVRシステムとも連携できるデータベースシステムに画像が搭載されて、一旦デジタル・アーカイブが完成します。
修復中の作業の見学や修復後の特別鑑賞会は、どこで開催される予定でしょうか?
修復作業は、修復会社の特別の許可を得て、普段絶対に入ることのできない、修復工房の中で職員さんから直接お話を伺いながら見学します。特別鑑賞会は、肉眼で間近にみてもらうため、特別鑑賞会は立命館大学アート・リサーチセンターの特別閲覧室を使います。特別鑑賞会では、アート・リサーチセンターが所蔵する酒呑童子関係作品も可能な限りお見せする予定です。
立命館大学アート・リサーチセンターとはどのような施設ですか?
立命館大学アート・リサーチセンターは、京都で日本の芸術、芸能を中心とする有形・無形の人間文化の所産を、情報技術を応用しながら、研究・分析し、記録・整理・保存・発信することを目的として1998年に設立されました。まだ、20年しかその歴史はありませんが、デジタル技術を駆使した活動のなかで、原物の文化財の収集も進めており、たとえば、浮世絵は1万枚以上、古典籍も6000点以上と、日本でも有数の収蔵量を誇る組織に急成長しました。また、世界中の日本文化財をデジタルアーカイブし、データベース化してオンラインで閲覧出来るようにしていることも特徴です。最先端の研究を進めつつ、きちんとデジタル時代の研究の基盤を固めていきながら、学外の研究者や一般の方にも貢献できる研究所を目指しているのです。
「寄附型」プロジェクトとは、どのようなものですか?(枠組み/個人情報の取り扱い/領収書の発行主体など)
ブルーバックスアウトリーチ事務局がお答えします:「寄附型」プロジェクトでは、起案者である研究者の方が呼びかけ人となってプロジェクトを行い、所属している大学等の基金などへの寄附を呼びかけるプロジェクトです。ブルーバックスアウトリーチでお支払いいただく支援金は、そのまま大学等の研究機関の寄附受付口座などに届けられます。
こうしたプロジェクトでは、「寄附型」ではないプロジェクトとは異なり、支援者のみなさんの寄附を受け付ける(寄附契約を結ぶ)のは、各大学等の寄附基金になり、領収書の発行や、リターンの発送なども、原則として各大学等から行われます。
これらの寄附、および各大学等が行うリターンなどの業務のため、ブルーバックスアウトリーチは、必要な個人情報を、大学等と共有させていただきます。
より詳しくは、「利用規約(寄附型プロジェクトに関する特則)」をご参照ください。

赤間 亮

立命館大学
文学部
教授

研究内容

情報科学

自己紹介

日本の有形無形の文化財を対象にデジタルアーカイブの実践研究を進めています。とりわけ美術品や文化資源は、幕末から大量に輸出されることで、海外の博物館や個人が大量に所蔵しており、日本と海外の研究者との間で情報を共有する必要があります。また、能や歌舞伎、京舞などの伝統芸能を正しく理解する観客を育てていく手法開発も必要です。こうした状況を解決する方法としての新たなモデル構築に挑戦しています。

プロジェクト数

1

プロジェクトについて質問する

リターン

¥1,000

ホームページの謝辞欄にお名前掲載

立命館大学アート・リサーチセンターのホームページに、謝辞とご支援いただいた方のお名前を掲載いたします。

個数無制限

23人が支援

¥5,000

修復した絵巻の1部をVRで先行公開! 特別鑑賞権

+ホームページの謝辞欄にお名前掲載

 

修復した絵巻の象徴的なシーンを、VRの映像としてお届けします。自宅のパソコンやタブレットにて、美術館で鑑賞しているような雰囲気でいつでも作品が楽しめます。

※以下はあくまでイメージです。

 

個数無制限

8人が支援

¥10,000

修復後の絵巻展覧会に2名様ご招待&サイン付き図録進呈

+修復した絵巻の1部をVRで先行公開! 特別鑑賞権

+ホームページの謝辞欄にお名前掲載

 

修復した絵巻の一般展覧会に2名様をご招待します(会期中)。また、赤間教授のサイン入り図録も進呈いたします。

※展覧会の日程は未定(2022年頃)です。

※開催場所は、立命館大学アート・リサーチセンター内。現地までの交通費は各自ご負担いただくこととなります。

個数無制限

20人が支援

¥30,000

修復後の絵巻をひと足早く鑑賞できる「先行内覧会」にご招待&図録進呈

+修復した絵巻の1部をVRで先行公開! 特別鑑賞権

+ホームページの謝辞欄にお名前掲載

 

修復した絵巻を一般公開前に鑑賞できる先行内覧会にご招待いたします。本絵巻だけでなく、そのほかの酒呑童子関連作品についてなど、展覧会全体の特別レクチャーをいたします。それに加えて、作品が掲載された図録も進呈いたします。

※先行内覧会の日程は未定(2022年頃)ですが、ご都合がつかなかった場合、一般公開の展覧会2名様分の入場券を進呈。また、一般公開の展覧会期間中にも別途レクチャー日(1日)を設ける予定なので、そちらへの参加も可能です。

※開催場所は、立命館大学アート・リサーチセンター内。現地までの交通費は各自ご負担いただくこととなります。

個数無制限

4人が支援

¥50,000

めったに入れない絵巻修復現場の「特別見学会」にご招待!

+修復後の絵巻展覧会に2名様ご招待(期間中)&図録進呈

+修復した絵巻の1部をVRで先行公開! 特別鑑賞権

+ホームページの謝辞欄にお名前掲載

 

国宝の修復も手掛ける熟練の技術を持つ職人さんの解説を聞きながら、実際に、絵巻をどのように修復しているのか、目の前で作業を見学していただきます。

※見学会は、複数日または複数時間帯から選んでいただくことを想定しています。(2020年開催を目標)

※場所は京都市内。現地までの交通費は各自ご負担いただくこととなります。

定員に達しました

10人が支援

¥100,000

修復した絵巻を目の前でじっくり見られる「非公開特別鑑賞会」にご招待!

+修復後の絵巻展覧会に2名様ご招待(期間中)&図録進呈

+修復した絵巻の1部をVRで先行公開! 特別鑑賞権

+ホームページの謝辞欄にお名前掲載

 

修復した絵巻の現物を間近で見ながら、赤間教授が絵巻について、修復作業について、そのほかの酒呑童子関連作品について、じっくり解説します。一般公開の展覧会期間中に設定する特別レクチャーへの参加も可能です。

※非公開特別鑑賞会の日程は未定(2021年頃)です。

※開催場所は、立命館大学アート・リサーチセンター内。現地までの交通費は各自ご負担いただくこととなります。

残り20個

0人が支援

¥500,000

修復後の絵巻展覧会にて、解説パネルに〈特別支援者〉としてお名前を表示!&展覧会特別解説ツアー

+絵巻修復現場の「特別見学会」

+修復した絵巻の「非公開特別鑑賞会」にご招待

+修復後の絵巻展覧会に2名様ご招待(期間中)&図録進呈(会期中の特別レクチャーにも参加可能)

+修復した絵巻の1部をVRで先行公開! 特別鑑賞権

+ホームページの謝辞欄にお名前掲載

 

修復した絵巻の展覧会をおこなう際、本作品の現物展示の解説パネルに〈特別支援者〉としてお名前を記載させていただきます(会期中)。また、Web上での展示の際にも同様にお名前を掲載いたします。展覧会にお越しいただいく際には、記念写真撮影、赤間教授による特別解説ツアーもさせていただきます。

※5本ある絵巻のうち、どの巻物の解説パネルにお名前を記載するかはご指定いただけません。

 

 

残り2個

3人が支援

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